中国の唐の時代を舞台にした短編です。地方官吏が常日頃から悩まされている持病の頭痛を、貧しい身なりで流浪する僧が直してくれます。その力に驚いた官吏は、その僧から本当に凄い人物のことを教えられます。森鴎外が子供を楽しませるために話した内容を、小説に仕立て直しました。 、
宮沢賢治作品のなかでも人気の高い寓話です。時の流れとともに土地も暮らしも変わっていきますが、いつの時代にも人の心を豊かにしてくれるものがあります。その価値がわかるのは、利にさとい人でもなく、自分を賢いと思っている人でもなく、純粋な心を持った人です。
菊池寛が歴史について書いた作品は、大衆向けでわかりやすくエピソードなどを織り交ぜながら飽きさせずに歴史の面白さを教えてくれます。特に時代を動かした人物については、ポイントを抑えながら生き生きと描き出すことに定評がありました。
山本周五郎の滑稽ものには、ときおり粗忽者が登場します。この短編には幾人もの粗忽者が登場しますが、舞台が落語の長屋と違い堅苦しい作法にしばられた武家社会だけに、ひと味違う可笑しみがあり、劇的な役割を果たすことになります。
夏の休暇で海辺のホテルを訪れた女優は、そこで見かけた男性に一目惚れします。互いを知っていく二人は、不思議な縁で繋がっていました。昭和モダニズムの頃に、新時代の感性を取り入れた作品を発表した渡辺温の短編です。
人々が夜に集まって怪談を語り合う百物語。そこで語られる怪談だけでなく、百物語という催しそのものが、不穏で猟奇性を帯びて感じられます。上州の若侍たちが山寺で行った百物語の最中に、不思議な女があらわれます。それは妖怪でしょうか、なにかの予兆だったのでしょうか。
赤穂藩浅野家の小野寺十内は文武に優れ、京都留守居役を務めながら愛妻とともに初老をむかえました。そのまま何事もなければ悠々自適の老後となるところでしたが、松の廊下の切腹事件が起こり、夫婦の晩年は一変します。それぞれの本分を尽くした夫婦の物語です。
明治から戦前の昭和に詩人として一時代を築いた薄田泣菫は、味わい深い随筆でも人気でした。人生の晩年に春を感じて心に浮かぶさまざまな思いを、詩人らしいフレーズを織り交ぜながら、訥々とした語り口で浮かび上がらせます。泣菫は春にまつわる作品が多く、春の甲子園の2代目大会歌「陽は舞いおどる甲子園」の作詞家でもあります。
主人公は合戦の最中に、まさに身を捨てた激烈なやり方で味方の攻撃を支え戦を勝ちに導いたものの、評価をされないばかりか陰で嘲られるような境遇に陥ります。彼には出世よりも貫きたい武士の道があり、意外なところに理解者がいました。
徳川幕府の初期、厳しくキリシタンを弾圧した役人が、現れた幻士に惑わされ、運命を翻弄されます。田中貢太朗は幅広い分野で作品を発表しましたが、なかでも大いに筆をふるった怪談奇談の代表的な短編です。
ご存じのように夏目漱石の「吾輩は猫である」は、日本の近代文学史を語るときに欠かすことの出来ない重要な作品です。視点は新鮮で語り口は軽妙、面白く読ませながら人間について考えさせます。この作品が世に出るには、さまざまな偶然があったことが語られます。
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