ボクの名前はオトジロウ。耳長ペングィンです。
ボクたち耳長ペングィンのことは知ってる?
もともと南極に住んでいたボクたちは
ある日、南極探検にやって来た君たちニンゲンの仲間にあったんだ。
ニンゲンはボクたちの耳が長いことに驚いてた。
もっと驚いたのはボクたちがニンゲンの言葉を理解できることだった。
そんなの当たり前なのに。
だってボクたち耳長ペングィンは
ニンゲンが地球上を歩き出すずっと前からいろんな「音」を研究していたんだよ。
ボクたちは「音」を聞いただけで意味が分かるんだ。
その人たちはボクたちを自分のテントに招待した。そしていろんな話をした。
ボクたちは南極から出たことはなかった。
大地は氷に覆われているのが当たり前だと思っていた。
でもニンゲンはそうじゃないところにたくさん住んでいるって聞いた。
『そこにはどんな「音」があるんだい?』
そう尋ねると『南極にはない音ばかりだ』って答えたんだ。
そう聞いてからボクたちは毎日眠れない夜を過ごした。
想像のつかない「音」が海の向こうにたくさんあるのだと思うと
いてもたってもいられなくなった。それは耳長ペングィンの習性なんだ。
南極探検の人たちが帰る日。ボクたちはみんなでお願いをした。
南極じゃない、新しい世界に連れていってほしいと。
そのあとどうやって南極を飛び出しボクたちが世界に散らばったのか
詳しいことはここでは話せない。そういう約束だから。
ボクは日本で暮らすことにした。
毎日いろんなところに行っていろんな「音」を聞いている。
地球にはたくさんの「音」があふれている。
今までボクのお父さんもお母さんも
おじいちゃんもそのまたお母さんも聞いたことのない「音」を聞けるなんて!
素晴らしい毎日だ。
でもとてもじゃないけど全部覚えてなんていられない。
だからボクは「音」を図鑑にして残すことに決めた。
それがこの『オトジロウの音図鑑』さ。
見つけた「音」を何度でも聴ける。何度でもその場所のことを思い出せる。
こんなに素敵なことってほかにあるかい?
世界に散らばっていったボクの仲間の耳長ペングィンのみんなにも聴いてほしい!
もちろんボクたちを新しい世界に連れ出してくれたニンゲンのみんなにも
ボクが集めた「音」を楽しんでもらいたいんだ。